釧路市街地の城山という場所には、「お供え山」と呼ばれる小さな山があります。こちらの正式名称は「モシリヤチャシ」跡。チャシとは、アイヌの人々が築いた砦(城)のことです。基本的には、丘や岬、溝や崖などで周囲と区別された高い場所に築かれ、同じ市街地の春採湖にも「ハルトルチャランケチャシ」跡があります。これらは平成27年(2015年)に国の史跡に指定されました。
■モシリヤチャシ跡
Moshiriya Cashi
「モシリヤ」とは、アイヌ語で島のある川。その名の通り、近くには釧路川が流れています。チャシ全体の大きさは、直径170メートル、短径70メートルで、形は前方後円墳のように2つの山が連なり、やや高い本砦の標高は18メートルです。
餅を重ねたような形に見えることから、地元では「お供え山」と呼ばれ、この地域の城山という地名もチャシから名づけられたようです。江戸時代からの伝承によると、1751年にトミカラアイノというアイヌが築造したとされています。
現在、こちらのチャシは周囲に柵を設けて立ち入りを制限していますが、例年8月の山の日には一般開放しています。実際に登ってみると斜面が急で大変ですが、山頂は見晴らしがよく、昔のアイヌの気分になって市街地を見渡せます。
※モシリヤチャシ跡の見学については下記HPのURLをご覧ください。
■ハルトルチャランケチャシ跡
Harutorucharanke Cashi
同じく市街地東部の春採湖のほとりにある、半島のような丘のチャシ。「ハルトル」は春採という地名、「チャランケ」は裁判・談判を意味するアイヌ語です。チャシは戦いのためだけではなく、見張り場、儀礼・儀式、話し合いの場としても使われていたことがわかります。
全体の大きさは、東西30メートル、南北15メートルで、標高は12メートル。壕(ごう)と呼ばれる防御のための溝のほか、東側に竪穴式住居跡7個が確認でき、南側には船着き場があったようです。
山頂近くには「新釧路西国三十三ヶ所観音霊場」の石仏などが祀られています。
こちらはいつでも自由に立ち入ることができる場所で、山頂から眺める春採湖の景色が最高です。新緑、紅葉、結氷、積雪といった、季節ごとに移り変わる春採湖の風景を楽しむことができます。
釧路のチャシは観光的なスポットではありませんが、実際に登ってみて歴史の名残をたどり、アイヌを身近に感じてみませんか?